ディフェンス戦術

#04-02 ノーミドルDF

Basket_IQ

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ノーミドルDF

ノーミドルDFの流行と廃れ

10年くらい前、「ノーミドルDF」が大流行しました。とにかくミドル側へのドライブは全部シャットしてエンドライン側に行かせるというものです。

したがって、ボールマンDFはエンドライン側への方向付けが大切になります。その方向づけを”ディレクション”と呼びます。

当時はゲーム中にベンチから「ディレクション!!」という檄が飛びまくったものです。

当時は「ノーミドルDFが理論上もはやバスケの基本」くらいの空気がありましたので、私も当然ノーミドルを指導してみました。しかし、すぐに「ダメだな」と思いました

ノーミドルのためにボールマンDFがディレクションすると、インラインを開けてしまう場合が非常に多いのです。これが私にとっては致命的に思えました。

さらにノーミドルDFはヘルプDFありきの戦術なので1v1で守るという責任感も薄れます。オフボールDFのミスが即失点につながることが多く、被イージーレイアップが増えました。

ただ理論値はやはり高く、今でもOFに自由に選択肢を与えない「DFが主導権を握るシステム」としては一定の評価があると思います。

一時期のようにノーミドルの徹底をしているところはほとんどなくなったように思いますが、「45°より下は基本としてミドルライン側に行かせよう」としているチームはとても多いように思います。

ちなみにノーミドルの徹底で素晴らしいDFを構築されていたのは正智深谷高校ですね。あそこまで徹底して指導しないとなかなか上手く行かないのがノーミドルDFだと感じています。

もっと大きな視点でノーミドルDFが廃れたのは第一はPnRのスキルで特にスネイクのスキルが定着したからだと思います。

ノーミドルDFにおいてPnRをどう守るかの定番は「アイスDF」です。

アイスDFでPnRをノーミドルで守るのが主流でしたが(それゆえ日本でもアイスDFは一時期よく耳にするようになりましたが、アイスは結構難しいので、そこまでちゃんと指導できているチームは少なくて、ノーミドルDFがいわゆる「片手落ち」状態で指導されていて、PnRされるだけで割とノーミドルが崩れるというチームも多く、ノーミドルが廃れるのが早かった原因でもあると思います)、アイスDF対するカウンタームーブとして「スネイク」が定番化して結局ノーミドルを貫くことが難しくなってNBAでは今アイスDFを見ることは少なくなりました。(もちろん今でも戦術の一つとして一般的に残っています)

もう一つの理由がスロットからの1v1やPnRの増加です。

一昔前はウイング(=45°)からのオフェンスが多かったのですが、現在はスロット(=ツーガードポジション)からの1v1やPnRが主流になっています。

ウイングに比べてスロットはインラインをアタックされたときのヘルプが難しいのでインラインが空いてしまうことのデメリットが非常に大きいです。

そのため、一昔前に比べてさらに1v1でボールマンがインラインを守ることの重要性が増したように感じます。

このように、あるDFが流行れば、そのカウンタースキル(戦術)が増え、またそのカウンターDFが考案され、というようにバスケは日々進化しています。

流行を追うのが必ずしも正解ではないというのはこの理由です。

ちなみに、当時ノーミドルが”バスケットボールの基本”レベルで語られていたときに私が受けたクリニックの中で「ノーミドルはしない」と言い切っていたのが元日本代表女子HCの中川文一氏と元日本代表男子HCのジェリコ氏でした。

この2名のコーチのクリニックは複数回受講していますが、バスケットボールを深く考察し、ご自身の確固たるコーチングフィロソフィーが構築されていてブレない指導で本当に勉強になることが多かったです(だから複数回受講しているわけですが)。

流行に敏感(最新情報を知っている)なのは大切ですが、それを取捨選択するのは指導者の哲学であり、それが何より大切なことだということが大変よくわかったできごとでした。

まとめ

  • 相手の【攻撃回数】を減らすために、相手の【OR】を減らす。
相手のORを減らすための参考プレーモデル
  1. スクリーンアウトとBOXアウトをする
  2. 5人全員がリバウンドに参加する意識を持つ
    →アウトサイドのプレイヤーがリバウンドを取る

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スタンフォード女子の試合と『岡田メソッド』に衝撃を受けてPrinceton offenseとバスケットボールの体系化を極めるために日々勉強中
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