#03-01-2_1チームの得点はどうやって計算できるか【期待値の考え方】
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#03プレーモデル:01バスケットボールの原則
②攻撃回数とシュートの期待値
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- 得点計算に用いられるスタッツ(FG%・eFG%・seFG%)
02-1 攻撃回数とシュートの期待値
この章では、前章で確認した試合に勝つための
【自チームの得点】>【相手チームの得点】
という勝利の方程式を達成するため、バスケットボールにおいて得点を取るということについて最も大切なことは何なのか、ということを体系化します。
前の記事はこちらです。
チームの得点を計算する【Basketball Analytics】
さて、ここまで最も大切なことを確認してきましたが
「当たり前のことを何長々と書いてるんだ。そんなことが知りたいんじゃないんだ」
と思っている方も多いかもしれません。
(ただ、私は過去の自分の指導を振り返ると、中途半端に学べば学ぶほど、どんどんその当たり前の前提の認識が薄れて戦術やスキルといった枝葉の部分ばかりフォーカスしてしまっていた気がします。ですのでこの前提の確認は本当にかなり大切なことだと思っています。)
ここからが、いよいよ核心に迫っていきます。
バスケットボールの得点は計算できる
バスケットボールの得点は計算できます。
ここがサッカーや野球とは異なる「バスケットボールの競技特性」です。
バスケットボールは確率のスポーツです。
昨今盛んに言われている「アナレティック・バスケットボール」というのは、このことです。
(Analytic Basketballというのは検索しても海外のサイトはヒットしないので、この呼び方は日本特有のものかもしれません・・・)
では、どうやって計算するか。
それは
【得点】=【シュートの回数】×【シュートの期待値】
です。
厳密には少し違いますが(後述)、これがわかりやすく育成年代にも伝えやすいのでこの式でとくに問題はありません。
【得点】=【シュートの回数】×【シュートの期待値】
例えば、チームが1試合に80本のシュートを打ってその期待値が0.8であれば、
チームの得点は
80×0.8=64(点)
と計算できる(と考える)いうことです。
1本のシュートの成否よりも1試合通した期待値に着目する
【得点】=【シュートの回数】×【シュートの期待値】
と考えることで、何がかわるのか?
それは、1本のシュートの成否よりも1試合通した期待値に着目するということです。
例えば
- 「普段40%の確率で決めているA君のジャンプシュート」でチームオフェンスが終わる
- 「普段60%の確率で決めているB君のゴール下シュート」でチームオフェンスが終わる
この2つのオフェンスが試合中に
「A君のシュートが入って、B君のシュートが外れた」ということが当然ありえます。
このときに、どちらのオフェンスの方が「Good offense」だったと指導者が評価すべきかというと、B君のシュートが外れたオフェンスの方だということです。
今回は外れたかもしれないけれど、試投数を増やしていけば、本来の確率に収束していく。それが確率の考え方です。
例えば、サイコロを6回投げたときに、必ず1の目が出るかどうかはわからないですが、サイコロを600回投げたらおよそ100回程度は1の目が出るはずです。
ですので、今回はA君のシュートが入り、B君のシュートが外れたかもしれないが、A君もB君も試合中に10本のシュートを打てばチームとしては、A君のシュートでは8点、B君のシュートでは12点取れるはずだ。
とそう考えるわけです。
つまり、チームオフェンスとしては、B君のゴール下シュートで終わる方が効率が良いと考えます。
そう考えると、チームオフェンスの評価が「シュートが入ったかどうか」ではなく「期待値の高いシュートが打てたか」つまり効率が良いオフェンスかどうか、というものになります。
結果で評価するのではなく、プロセスを評価するという評価軸に変わります。
そうなると、指導者も選手も意識が変わります。
選手も指導者もシュートの成否に一喜一憂してメンタルが不安定になることもありません。
シュートを外した選手に怒鳴り散らしているような指導者はこの「現代バスケの基本のき」も知らないんだな、と私はいつも思っています。
ただ、この考え方にもあまり一般的に語られていない落とし穴があると私は感じています。
そのことは、期待値を深掘りするところで後述したいと思います。