#03-01-2_3得点計算に用いられるスタッツ
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#03プレーモデル:01バスケットボールの原則
②攻撃回数とシュートの期待値
- チームの得点はどうやって計算できるか
- バスケットボールのKPI
- チームの得点を計算するために用いられるスタッツ ←Now
02- 攻撃回数とシュートの期待値
この章では
【得点】=【シュートの回数】×【シュートの期待値】
で計算できることを確認し、最も重要なデータである【シュートの回数】と【シュートの期待値】をKPIと呼ぶことを解説しました。
前の記事はこちらです。
今回は、これを少し深掘りし、よく使用されるスタッツについて解説します。
チームの得点を計算するためのスタッツ
ここまで
【得点】=【シュートの回数】×【シュートの期待値】
と考えてきましたが、これは実は正確なものではないということを以前書きました。
ここでは深掘りして、この式のより正確なものを実際にバスケの分析に使用される基本的なスタッツの解説をしながら具体例を用いて見ていきます。
シュートの期待値
まず【シュートの期待値】ですが、これは
【シュートの期待値】=【シュートの点数】×【シュートの確率】
でした。つまりシュートの確率を出す必要があります。
シュートの確率【FG%】
シュートの確率はバスケットでは【FG%】というスタッツで考えます。
確率ですから単純に
【試投数(FGA:Field Goal Attempt)】/【成功数(FGM:Field Goal Made)】×100
で求まります。
では単純にFG%が高ければ良いかというと、そうではない。というのが【期待値】のミソです。
50%の2点と40%の3点では
2×0.5=1
3×0.4=1.2
となり40%の3点の方が期待値は高いわけです。つまりこちらの方が効率が良いと考えるわけです。
なので、現代バスケでは、FG%だけを考えていては解像度が低く、少なくとも2ptと3ptで分けて考える必要性があります。
具体的に考えます。
2ptシュートを50本打って20本成功で確率が40%。3ptシュートを20本打って5本成功で確率が25%だった試合があるとします。
すると2ptの期待値は、2×0.4=0.8
3ptの期待値は、3×0.25=0.75
となるわけです。
なので、このチームの得点としては
【得点】=50(本)×0.8(2pt期待値)+20(本)×0.75(3pt期待値)
=40(2pt点数)+15(3pt点数)
=55
となります。
2ptと3ptを同時に扱える【eFG%】
期待値を考える上で2ptと3ptのFG%は同列には扱えないということでした。
そのため別々に考えて計算する煩雑さがありました。
それを一緒に扱うことができるスタッツがeFG% (Effective Field Goals Percentage)です。
単純に3ptには2ptの1.5倍の価値があるので、その分を足してやります。
普通のFG%は
【FG%】=(【成功数】/【試投数】)×100
ですが
【eFG%】=((【成功数】+0.5×【3pt成功数】)/【試投数】)×100
となります。
0.5×【3pt成功数】を足してやることで3ptシュートの価値を1.5倍にしていますね。
これを用いて先ほどの試合を分析してみると
【eFG%】=((25+0.5×5)/70)×100
=39.2…%
となります。
このeFG%は3ptが補正されているものなので、期待値を出すときにはすべて2ptで計算して大丈夫です。
つまり、eFG%が高い選手が期待値の良い選手と単純比較できるわけです。
eFG%を使うとこの試合のチームとしてのシュートの期待値は
【期待値】=2×0.392…
=0.785…
となります。
よってeFG%を使えば
【得点】=【シュートの本数】×【シュートの期待値】
=【シュートの本数】×2×【eFG%】
と変形できます。
実際に計算すると
【得点】=70×2×0.785…
=55
と先ほどと同じ値がちゃんと出てきます。
eFG%はFG%の分子に3pt成功数の半分を足すだけという非常に簡単な計算で求められるので、基本的にはeFG%を用いるのが良いでしょう。
先ほど書いたように、シュートの期待値とeFG%は比例しますので、ゲーム分析の際にシュートの期待値の目標設定の代わりに、eFG%の数値を目標設定して使えるので便利です。
つまり、前回説明したKPIを【シュートの回数】と【eFG%】と置き換えることができます。
もしかしたら、期待値よりもパーセンテージで与えられている方が選手はなんとなくわかりやすいかもしれません。
実際にはフリースローを加える必要がある
先ほどの計算では実はフリースローを考えていませんでした。
フリースローを考慮したeFG%のようなものは現在のところ使われていないようです。
ちなみに、FG%やeFG%の【試投数】にはファールを受けたシュートはシュートが外れた場合は含まれません。
シュートが成功しバスケットカウントワンスローを獲得した場合のみ試投数にカウントされます。
これは、選手を評価する指標としてFG%やeFG%を使っているので、フリースローを多く獲得するような良い選手の数字が下がってしまわないように配慮したのでしょう。
後の章で解説しますが、一般的にFTの期待値は高いとされていますので積極的にファールドローを狙うのは効率の良いバスケットと考えられています。
しかし、それはあくまでFTをしっかり決めるから言えることで、ファールドローしたは良いがFTをよく外すとなれば、ファールドローせずに交わして決めに行った方が良いかもしれません。
ですので、特にFTのシュート成功率があまり高くないような育成年代のチームでは、独自のスタッツとしてファールドロー時も試投数に入れ、さらにフリースローの得点も考慮されるようなeFG%の改良版を使うのが良いと私は考えています。
FTを考慮した【seFG%】
そこで私は独自にseFG%(Super Effective Field Goals Percentage)を考えました。(名前は適当につけましたw)
【seFG%】=((【成功数】+0.5×【3pt成功数+FT成功数】)/【試投数(被ファール含)】)×100
という式です。
先ほど例に出した試合のスタッツで、さらにファールを5回されていてFTを10本中6本成功というものを加えます。
すると今までの
【得点】=【シュートの本数】×【シュートの期待値】
にはFTは入りませんから
【得点】=【シュートの本数】×【シュートの期待値】+【フリースローの得点】
となるので、先述の数値を使うと得点は55+6=61点です。
次にseFG%を使って計算してみます。
条件を振り返っておくと、
2ptシュートを50本打って20本成功で確率が40%。3ptシュートを20本打って5本成功で確率が25%、FTが10本打って6本成功の60%です。
【seFG%】=((25+0.5×(5+6))/75)×100=40.66…(%)
これも補正されているので期待値を出すときにはすべて2ptで計算して大丈夫です。
【期待値】=2×0.4066…=0.813…
となり
【得点】=【シュートの本数(被ファール含)】×【seFG%】
=75×0.813…
=61
となり、先ほどと同じ値が出てきます。
一般的に使われていないスタッツを使うのはいろいろとデメリットもありますが、個人的にはFTの確率込みで評価できるseFG%(名前は皆さんでつけてくださいw)の方が特に育成年代では本質的だと思います。
seFG%は私の独自スタッツなので使いづらいかもしれませんが、いづれにせよFTによる期待値をしっかり評価する枠組みは作っておく必要があります。
これに限らず、プロで使われている指標や考え方がそのまま育成年代に使えるかというとそうでもない部分も多いので、何が使えて何が使えないかというのは自ら考えていかなくてはいけません。
スタッツまとめ
suFG%を用いると・・・
で計算することができる。