#03-01-5_2-4 【アドバンテージ】④場面的優位性
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#03プレーモデル:01バスケットボールの原則
⑤シュートの期待値を上げる
- シュートエリアによるシュートの期待値
- 良いシュートを打つために【アドバンテージ】に気づく・作る・攻める
- 数的優位性
- 位置的優位性
- 個の優位性
- 場面的優位性 ←Now
- そもそもの「シュート力」を向上させる
- 期待値で考えるバスケットの落とし穴
01-5 シュートの期待値を上げる
さて、前回までの復習です。
【アドバンテージ】をクリエイトして攻める
結局OFとは「期待値の良いシュートを打つためにアドバンテージを作って攻めることが目標である」という話でした。
- 数的優位性
- 位置的優位性
- 個の優位性
- 場面的優位性
前回は【個の優位性】のプレーモデルでした。
今回は最後の優位性である【場面的優位性】です。
01-5_2_4 アドバンテージ④場面的優位性
【場面的優位性】は少しイメージしずらいかもしれませんが、1v1に対してその瞬間少し有利な状態を指します。
簡単にいうと「ズレ」です。
DFに対して少しズレが作れている場面を【場面的優位性】と呼んでいます。
そのズレが大きいものであれば、【数的優位性】や【位置的優位性】になるのですが、そこまでは行っていない状態ですね。
少し勝ってる状態です。
その状態を私は「主導権を握っている状態」と考えています。
その状態を【場面的優位性】がある状態と位置付けています。
ですので、優位性としてはあまり強いものではありません。
しかし、レベルが上がれば簡単に強い優位性は作らせてもらえませんから、まずは小さなズレ=場面的優位性を作ってそこを突破口により強い優位性につなげていきフィニッシュするようなイメージです。
そういう意味では、試合中では場面的優位性が一番出現するものであり、それを的確に攻めて”代償を支払わせる”ことができれば、強いチームができると言えます。
そういう意味では、【場面的優位性】をチーム全員が認知することはとても大切だと考えています。
4つの優位性の中では、認知しづらい【位置的優位性】と【場面的優位性】をしっかり指導されたチームが良いOFができると考えています。
場面的優位性のプレーモデル
ズレ(遅れ)とチェイスモードを作って、主導権を握り、後出しジャンケン
- ズレ(遅れ)を作る・ズレ(遅れ)に気づく
- 主導権を握り【チェイスモード】(後追い状態)をつくって、カウンター(後出しじゃんけん)を取る
- クローズアウトシチェーションを攻める
- 第一の選択肢はシュート
- エキストラパス
キーワードは
- ズレ(遅れ)
- チェイスモード
- 主導権
- 後出しジャンケン
です。
場面的優位性は分かりずらいと思いますので
丁寧にみていきます。
ズレ(遅れ)を作る・ズレ(遅れ)に気づく
繰り返しですが、場面的優位性とは一番簡単にいうと「ズレ」です。
ズレは位置のズレと時間のズレがあります。
- 位置のずれ
- 横のズレ
- 縦のずれ
- 時間のズレ
- 遅れ
時間のズレによって横ズレ縦ズレが起こりますので、同時に起こることはあります。
ズレを作る
チーム戦術において、セットオフェンスであったりスクリーンであったり何らかの方法で「ノーマークを作ろう」と計画しますが、ほとんどの場合はノーマークはできません。
できるのはズレ。
そのことを指導者も選手もしっかり認識しておく必要があります。
ノーマークができなくても、ズレを作ることができれば、チームのクリエイトとしては成功です。
個人の1v1にしても、NBAの1v1を見ていたら、ズレを作るまでジャブステップなどのフェイクを使ってますよね。
ところが、自チームで1v1をやらせてみると、多くの選手は「ヨーイドン」でドライブしてしまいます。ズレを作る意識が低いのです。
チームでも個人でも「仕掛ける前にズレを作るんだよ」という共通認識は大切です。
ズレに気づく
先ほど書いたように、基本的にできるのはズレなので、ズレに気づきズレを攻める練習はどんなオフェンスシステムでも必要なわけです。
いわゆるアドバンテージドリルですね。
個人的には、試合の状況に近ずづけることが大切だと思っているので、このようなアドバンテージドリルだけでなく、チームの動きでよく出現する場面を切り取る形でアドバンテージドリルを作成するのもおすすめです。
1v1の練習をするときに、単純な1v1でこじ開ける力をつけていくのも大切ですが、ズレのない状況から1v1でこじ開けても、良いOFにならないことも多いので、1v1とは、ズレをつくいて攻めるものという共通認識を作るためにも、アドバンテージドリル的な1v1を練習する必要はあります。
主導権を握り【チェイスモード】(後追い状態)をつくって、カウンター(後出しじゃんけん)を取る
主導権の有無の認知
さて、次はズレが発生しときにどういう意識で攻めるのか、です。
ズレができた状態というのは、そのズレを修正するためにDFは頑張らないといけません。
つまりOFは余裕があり、DFは頑張っている状態です。
この状態は、OFが主導権を握っている状態です。
まず、オフボールにせよ、ボールを持った状態にせよ1v1の攻防において、今どちらに主導権があるのか、という状況判断の認知が大切です。
多くのTOVは、DFに主導権があるのに、OFが”頑張って”攻めた(ブレイク)ときに起こります。
OFは主導権が握れる(=場面的優位性が発生)するまでクリエイトする必要があるわけです。
【チェイスモード】をつくって、カウンターを取る
【チェイスモード】のニュアンスを掴むのは少し難しいかもしれません。一般的にバスケットボールで使われている用語ではないので。
このチェイスモードは武術家の甲野善紀さんの著作に使われていた言葉です。
武術の世界では「居付き」という言葉がよく使われます。居付いたことで反応が遅れてチェイスモードになってしまうという内容でした。
個人的には1v1と武術は非常に共通点が多いので、参考になることが多いです。
身体の動かし方を極めるのが武術ですから、応用できることが多いのも当たり前のことです。
個人的にそう感じていたら、サッカーでプロ輩出数がとても多い興国高校の監督が書いた本『プロにする魔法はないけど方法はある 興國高校サッカー部・内野流 諦めない育成』に同様のことが書いてあって面白かったです。
話が逸れてしまいましたが、あまり難しく考えずに、チェイスモード=後追い状態くらいでいいで特に問題ないです。ただそういうものに名前をつけといて共通認識として使えるということが大切です。
さて、何らかの方法で相手を【チェイスモード】にすることができたとします。
この状態は相手が後追いの状態、つまり自分が主導権を握っていて先手を取れている状態です。
この状態では、「自分には余裕があって、相手は頑張っている状態です」
そうなったら、後は頑張ってくる相手に対してカウンター(=後出しジャンケン)で逆をつき続けます。
チェイスモードの状態では非常にフェイクに引っかかりやすいので、特にフェイク使う意識が重要です。
フェイクにも2種類あって
- ズレを作るフェイク
- ズレを大きくするフェイク
です。
ジャブステップなんかはズレを大きくするフェイクで、クローズアウトシチェーションでのシュートフェイクなどはズレを大きくするフェイクですね。
チェイスモードでのフェイクは後者です。
先手を取って後出しジャンケン
カリーはオフボールでのこの駆け引きが非常にうまいですね。
一瞬の遅れ(時間的ズレ)を的確に捉えています。
どれだけ徹底マークを受けようとも3ptを鎮め続けてきた理由はここにあると私は思っています。
カリーの場合はその異次元のシュート力が「先手を取る」(主導権を握る)大きな力になっているので、そういう意味でもシュート力というのは本当に大切ですね。
小さな赤パンのコに注目してください。
常に【視野の戦い】をしていますね。視野の戦いからカウンターを取り続けズレを大きくしています。
一方で青パンのコは視野の戦いを全く意識していないことがわかります。
いわゆる「駆け引きの上手なコ」というの自分で【視野の戦い】や【チェイスモード】に気がついて実践できているコです。
今まで、コーチ仲間の方と話していても”それは教えられない部分”で”センス”だという人が多かったです。
私はそれを体系化し練習することで多くの「駆け引きの上手な選手(=バスケIQの高い選手)」を育成するのが目標だということです。
頑張っているのでフェイクに引っかかりやすい。
クローズアウトシチェーション攻める
ズレ(遅れ)とチェイスモードを作って、主導権を握り、後出しジャンケン
- ズレ(遅れ)を作る・ズレ(遅れ)に気づく
- 主導権を握り【チェイスモード】(後追い状態)をつくって、カウンター(後出しじゃんけん)を取る
- クローズアウトシチェーションを攻める
- 第一の選択肢はシュート
- エキストラパス
と3つ併記していますが、上の二つとこの「クローズアウトシチュエーションを攻める」は少し意味合いが違います。
上の二つは抽象的な考え方なのに対して、これは具体的なプレーであり戦術に当たる部分です。
本来ならばもう少し後の章で、体系化すべき内容かもしれませんが、【場面的優位性】が発生するプレーの中で最も頻出するシチュエーションで再現性も高く、その分指導が大切になるところなので、ここで扱っています。
クローズアウトシチュエーションは、DFが遅れていて、頑張ってボールへアプローチしている場面なので、まさに【場面的優位性】の要件を満たしているケースです。
繰り返しになりますが、【場面的優位性】が発生するプレーの中で最も頻出するシチュエーションで再現性も高いので、クローズアウトからの崩しは必ず練習をしておきましょう。
さて、ここではクローズアウトシチュエーションを攻める上で大なことを簡潔にまとめておきます。
第一の選択肢はシュート
基本ですが、相手が遅れているのでまずはシュートです。
シュートに自信のない選手はクローズアウトシチュエーションで、遅れている相手に突っ込んでいくケースも多いので、注意が必要です。
まずはシュートから入り、シュートに対して反応してきたらドライブが活きます。
上でも述べたように【チェイスモード】の選手はフェイクに引っかかりやすいです。クローズアウトシチュエーションではフェイクに引っかかってしまいがちなのは体感的にも納得できると思います。
ただし、横ずれの場合は、インラインが空いている(位置的優位性)ので、即アタックです。
位置的優位性
エキストラパスを使う
クローズアウトシチュエーションで大切な考え方の一つが、エキストラパスです。
キックアウトなどの後は、ローテーションで別のマークマンがクローズアウトしてくるケースが多いので、その場合はさらにパス(エキストラパス)をして大きなアドバンテージを作ります。
キックアウト後のエキストラパスの有用性は、優位性を大きくするということだけではなく、むしろ別の観点があります。
それは、キックアウト後はゴール下にプレイヤーが密集しているケースが多く、クロースアウトからドライブで抜いたとしても、ゴール下にDFが多く逆に良いシュートが打てないケースが多いのです。