Play Model

#03-01-5_4期待値で考えるバスケットの落とし穴

Basket_IQ

プレーモデル一覧のページ

プレーモデル一覧
バスケットボールの原則
ゲームサイクルでの原則
プレーの原則
チームの原則
グループの原則
個人スキル・1v1の原則
チャンクの原則

#03プレーモデル:01バスケットボールの原則

#03-01バスケットボールの原則
#03-01バスケットボールの原則

⑤シュートの期待値を上げる

  • シュートエリアによるシュートの期待値
  • 良いシュートを打つために【アドバンテージ】に気づく・作る・攻める
    1. 数的優位性
    2. 位置的優位性
    3. 個の優位性
    4. 場面的優位性
  • そもそもの「シュート力」を向上させる
  • 期待値で考えるバスケットの落とし穴 ←Now

01-5 シュートの期待値を上げる

シュートの期待値とは?【復習】

バスケットボールにおける得点は

【得点】=【シュートの回数】×【シュートの期待値】

で計算できました。少なくとも現代バスケはそのように考えています。

シュートの期待値とは

【シュートの期待値】=【シュートの得点】×【シュート確率】

でも求まる値です。

期待値について書いた記事はこちらです。

あわせて読みたい
#03-01-1_2試合に勝つためにはどうすれば良いか
#03-01-1_2試合に勝つためにはどうすれば良いか
あわせて読みたい
#03-01-2_3得点計算に用いられるスタッツ
#03-01-2_3得点計算に用いられるスタッツ
あわせて読みたい
#03-01-5_1シュートエリアによるシュートの期待値
#03-01-5_1シュートエリアによるシュートの期待値

期待値の考え方の落とし穴

オフェンスの期待値の考え方は多くの書籍などでも紹介されていて、指導者の間ではもはや基本となっていることだと思います。

しかし、この「期待値の考え方の落とし穴」についてはまだ書かれている書籍を見たことがありません。

確率は試行回数が多くないと収束しない

期待値の考え方のベースは確率です。

確率という考え方が意味をなすのは、「試行回数が多い」場合です。

例えば、大学入試などでは、予備校からリサーチで判定が出ます「A判定:合格確率80%」などです。

しかし、この生徒にとって重要なのは実際に受かったか落ちたか、であり

・A判定で落ちた

・E判定で受かった

場合、当たり前ですが「E判定で受かった」方が良いのです。結果というのは100か0かです。

一回しか受けられない入試では、「不合格の20%が最初に来ちゃったか。じゃあ、あとしばらくは合格が続くだろう」なんてことはないわけです。

受かったか、落ちたか。結局はそれがすべてです。結果が分かったあとでは確率なんていうのは納得するための口実くらいにしか使えません。

話をバスケットボールに戻すと

これから試合において試投回数が多い前半では「シュートの成否(結果)」よりも「シュートの期待値(プロセス)」の方が重要になります。試合が進んで試投が増えていくうちに確率が収束していう(と考えられる)からです。

しかし、試合の終盤、いわゆるクロージングでは、この1本を決めるかどうか、つまりシュートの成否(結果)の方が重要になってくるわけです。

目先の2点が欲しいのです。

NBAの試合を見ていると、クロージングでは、エースのポストアップやアイソレーションがあきらかに増加します。

前半からこれをやると、エースの消耗が激しくなって、クロージングでスタミナ切れになりかねません。試行回数が少ないクロージングだから使えるのです。

セットプレーもクロージンでは増加します。

セットプレーは初見が一番効きますので、試行回数が増加すれば収束していくと考えるのではなく、「1回目の期待値が一番高い」からです。

セットプレーは主に「一回のオフェンスの成否」にこだわる場面で使われるものです。

DF側も意図的にファールを使って止めることもあります。

これも試行回数が多い前半では使えません。ファールアウトしますから。

単調なバスケットになる

繰り返しになりますが、期待値でバスケットを考えるためには、「同じ現象を何度も起こす」ということが条件です。それが確率の考え方です。

つまり同じような狙いを持った同じようなバスケットを展開することでもあり、単調になりがちです。

近年では、この効率性を求めた結果、どのチームも同じようなバスケットをしていると感じる方は多いでしょう。

そのような単調性を生むことにつながっています。

現在では、DF側がこの効率の良い単調なバスケット(具体的にはPnR主体のスペーシングバスケット)に的を絞って守ってくる(どこも同じバスケットだからそれを守る練習に時間もかけられます)ので逆に効率が悪くなり始めていて、少しバスケットにバリエーションがまた生まれ出しているな、と感じています。

一時期よりバスケットが面白くなってきました。(個人の感想)

自分がチームを指導する上でも、相手が慣れて効率が落ち出したときに、何か変化をもたらす仕掛けは考えておいた方が良いと思います。

クロージングでのバスケットを計画する

先述の部分を少しまとめますと

オフェンスの目標は、期待値の高いシュート(Good shoot)を打つ効率の良いオフェンスを試行すること。

そのためのチームオフェンスを構築する。

でも実際にはゲーム終盤のクロージング(昔はクラッチタイムと言ってましたよね?)では、真逆で「目先の2点にこだわる」プレーがトップレベルでは繰り広げられています。

その主な理由は

  • DFがOFのシステム慣れて、オフェンス効率自体が下りがち
  • 残りのシュート試行数が数ないので、そもそも確率の考え方(プロセス評価)を適用するよりも実際にシュートが入ったっかどうか(結果評価)の方が大切

ということがあり、その結果

  • 一本のシュートをねじ込めるスキルやメンタルを持った”エース”のシュートが多くなる
  • 初回が最も威力を発揮する”セットプレー”が重要になる

となります。

そのため、クロージングでどのようなバスケットを展開するかの計画を指導者は建てて練習しておく必要があります。

具体的には

  • チームでデザインしたエースのアイソレーションプレー
  • イージーバスケットを指向したセットプレー

などです。

練習でも単にスクリメージをするだけなくクロージングを切り取ったシチェーションゲームを練習することが重要になってくると思います。

育成年代のスタッツ活用の難しさ

さらに加えて、育成年代では期待値を考えるときに特有の難しさがあります。

それは適切なデータの収集が難しいということです。

育成年代はプロのリーグとは違い、実力差にかなりの開きがあります。

自チームと同程度の強さのチームとばかり試合をするということはありません。

なので、格下とやればチーム全員のシュートの期待値は高く出ますし、格上とやればその逆になります。

前にも解説したように、確率は試行回数が増えれば増えるほど正確さが増します

なので個人スタッツも1試合だけのデータではなくある程度累積で考えた方が良いのですがいう青年代では、継続してデータを蓄積させていって使えるデータになるかというと、そうではないのです。

また相手の実力が多いく違えば、比較ができなくなるのでスタートの選手とベンチの選手でスタッツを比較することにあまり意味がなくなります

ベンチの選手は点数が離れたときや相手の実力が落ちるときに出場することが多いので、数値が高く出ることがあります。

その数値で比較してスタートの選手よりも優っているとはできませんよね。

育成年代の場合あくまで個人内での比較(縦の比較)にしか使いづらいです。

育成年代ではどのようにデータを収集して活用するのか、を考えていく必要があります。

あわせて読みたい
効果的なスタッツの採り方
効果的なスタッツの採り方

まとめ

  • 期待値の考え方は試行回数が多くないと通用しない
  • 試合の前半は期待値に基づく効率重視、クロージングは目先の2点をとる結果重視になる
  • 効率の良いチームオフェンスの構築の練習だけではなく、クロージングの時間帯のバスケットの考え方やプレーを構築して練習する
  • 育成年代ではそもそも期待値を算出するスタッツの収集に難しさがある
あわせて読みたい
記事を取得できませんでした
記事を取得できませんでした

ABOUT ME
バスケIQ<br>向上委員会
バスケIQ
向上委員会
スタンフォード女子の試合と『岡田メソッド』に衝撃を受けてPrinceton offenseとバスケットボールの体系化を極めるために日々勉強中
→Youtubeチャンネル
記事URLをコピーしました